筑波大学 松井豊名誉教授をお招きして、
「消防職員のための惨事ストレス対策」を職員研修として行いました。
松井先生には、惨事ストレスで起きる身体的な反応や、
対策の立てかたなど、実際に起きた事例を交えながら
お話いただきました。
消防士は職務上、災害現場で悲惨な体験をして、
強い精神的ショックを受けたり、被害者を救出できなかった場合に
罪悪感を覚えたりすることがあります。
このようなストレスを「惨事ストレス」と呼びます。
惨事ストレスとは、
「異常な状況における正常な反応」であり、
また、「誰もが影響を受ける可能性がある」
ということを認識し、惨事ストレスの反応が見られたら、
十分な休息をとることや、気分のリフレッシュを図ったりすること。
また、組織ぐるみで、これらに対処するために、
凄惨な現場で活動した後の隊員のケアや、
組織から守ってもらえている、という安心感を与える必要がある、
ということなどを学びました。
≪実際に起きた事例≫
水難救助現場で、水底に沈んでいる要救助者の名前を叫ぶ家族の姿があった。
懸命に救助活動を行い、要救助者を引き上げたが、命を救うことはできなかった。
その日以降、ふとした瞬間にあの家族の泣き叫ぶ声が聞こえるようになり、
夜寝られなくなってしまった。
そして水難救助の指令がかかると、体が固まってしまうようになり、
ついには現場に出動できなくなってしまった。
体を鍛え、明るく元気見える消防士でも、
災害現場での悲惨な体験から、心に不調をきたすことがある、
ということを、職員本人が認識するだけでなく、
家族や友人といった身近な人にも知っていただき、
職員の心の支えになっていただきたいのです。
松井先生も、惨事ストレスを受けた消防職員から
「家族や友人が心の支えになった」
という声を多く聞くとおっしゃっていました。
もし、これを読んだみなさまの身近に消防職員がいたら、
どうか、温かい声をかけてやってください。
その一言で、職員の気持ちが晴れ、楽になります。
すでに中濃消防組合では、
「惨事ストレス対策委員会」を立ち上げ、活動しています。
予防対策や、フォローの仕組みをつくり
惨事ストレスに苦しむ職員をださないよう、組織全体で取り組んでいきたいと思っています。
また、救急現場などで、その場にいあわせた方(バイスタンダー)も、
惨事ストレスを抱える可能性があります。
その場合は、リンク先のようなサポートを行っていますので、ご確認ください。