生活安心情報

バイスタンダーの重要性

「バイスタンダー」とは、災害現場に偶然居合わせた人のことです。

中濃消防組合の管轄する地域で実際にあった事例を紹介します。

 

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すがすがしい秋晴れが続く10月中旬。この日関市では市主催の大きな自転車ツーリングイベントが行われていました。穏やかな1日となるはずが・・・

 

一瞬でその穏やかな雰囲気は一転しました・・・

選手誘導スタッフとして参加していた50代男性が、走行中に転倒し起き上がらなくなったのです。別のスタッフが駆け寄ると、意識と呼吸がないためすぐに119番通報しました。

通報から救急車到着まで約12分、この間何もしなければ命を救う事は絶望的です。

 

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しかし、偶然現場に居合わせたツーリングイベントとは全く関係のない人が勇気を出して、「胸骨圧迫」と「気道確保」と「人工呼吸」を救急車が到着するまで、繰り返し行いました。

 

この勇気ある行動が絶望の12分間に希望をもたらしたのです。

 

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救急隊の私は現場に到着する直前、救急車の窓から見えた的確な心肺蘇生法にとても驚きました。救急車から降り状況を確認すると心肺停止状態であり、すぐさまAEDを装着し電気ショックを実施しました。その後救急隊が胸骨圧迫を行った時、傷病者の手が動いて圧迫する救急隊員の手を払いのけました。心拍再開か!??

傷病者を観察すると、「ドクン・ドクン・ドクン」と脈打つ感触が感じられ、自発呼吸も出てきました。

 

必要な処置を行い病院へ搬送する途中、傷病者が言葉を話しました。

「あぁ~~痛い・・・」(傷病者)

「○○さんわかる??」(救急隊)

「あぁはい・・・胸が痛いですね・・・」(傷病者)

しっかりとした声で私の言葉に反応してくれました。先程まで心臓が止まっていた傷病者がこんなにもしっかりと会話してくれる。救急隊として何度も救急出場していますが、初めての体験でした。

この傷病者は無事病院へ搬送され、急性心筋梗塞であることが分かりました。

 

搬送された病院で治療と入院を経て、11月初旬に元気な姿で消防署にお礼を伝えに訪問されました。

「あの時は本当にありがとうございました!!」その言葉と元気な声に、私はとても感動しました!!一つの命が救えたのです。救急隊としてこんなに嬉しい事はありません。

しかし、この命は救急隊だけが救ったものでは決してありません。素早い119番通報と救急隊が到着するまでの12分間、勇気を出して心肺蘇生法を行ってくれた方々がいたからこそ救えた命なのです。

 

災害現場に偶然居合わせた人の事を「バイスタンダー」と言います。

もしも、あなたが「バイスタンダー」となる時は勇気を出して命のバトンを私たち救急隊に繋いでください。

 

 

ご本人からのメッセージ

 この度は私を助けていただいたことに感謝しかございません。大変お世話になりありがとうございました。

私は10年ほど前にスポーツ自転車に乗り始め、その面白さを知り、多くの仲間もできて自転車チームも作りました。だんだん競技にもはまり最近ではバンク走行に傾倒しておりました。

自転車イベントでのスタッフとして参加することも多く、今回のせきサイクル・ツーリングは毎年ロングコースの最後尾の誘導員をやらせていただき、今年も例年と同じように最後尾から参加者をアシストさせていただきました。

当日はいつもより身体が重いのかな?という気はしましたが、自転車がお借りしている懐かしいもので重いこともあり、こんなもんなのかと気に留めていませんでした。最後尾の参加者の後ろにつき、間もなく休憩所だと安堵した瞬間、急に身体に力が入らなくなる感じでフワッとしたと思った瞬間から記憶がありませんでした。

その後、覚えていることは、『何か遠くでかすかに音が聞こえる。だんだんその音が近づいてくる。私の名前を誰かが呼びながら顔を叩いている。正直このときは眠いのに誰が邪魔しているんだろ』というような感覚でした。

目を開けると周りにいた方々が「良かった!」と話していましたが私は何が起きたかまだ把握できていませんでした。 聞き覚えのある女性の声を認識できその人は自転車チームの仲間だったので安堵し何があったかおおよそのことが理解できました。救急車の中で寝ており胸にはAEDのパッドが。正気に戻ってくるとだんだん胸に痛みを感じてきました。救急隊員の方が優しく接してくれ説明をしていただき、事の成り行きを理解できた次第でした。

病院に運ばれ、急性心筋梗塞ということで直ぐにカテーテル手術を受けました。当初、1ヶ月は入院と聞いたのですが、心臓のダメージが奇跡的に少なく予後良好とのことで、3週間弱で退院することができました。

後で、『倒れた時に心停止していた』と聞きゾッとしました。後遺症もなく普通に生きていることが奇跡だと知りました。

これも救急隊員の皆様方や、たまたま通りかかって心臓マッサージをやって下さった方や自転車関係のスタッフの方々、病院のスタッフの皆様の助けがあってのものです。助けていただいた皆様には感謝しかございません。生かされた命だと肝に銘じ大切に生き、どんなカタチでもよいので自分も皆様のお役に立てたらと思う次第です。

今は先ず助けていただいた方々のためにも健康になることが先決ですので、リハビリと食事制限で節制し1日も早く健康体に戻れたらと思います。 04-bystander4-20181126

心臓マッサージをしていただいた方やAEDをやってくださった方がいらっしゃらなければ間違いなく私は今この世にはいません。心臓マッサージやAEDの必要性を痛感致しました。

消防署で講習等もあるとのことですので、自転車チームとして皆で講習を受け、有事にも対応できるようになりたいと思います。

多くの皆様にも講習を受けていただき、私のような人を発見しましたら、直ぐに的確に対応できることを望みます。

乱文をお許しください。皆様の一層のご活躍をお祈りいたしております。

 

 

バイスタンダーに関する制度

「バイスタンダーサポート体制」

バイスタンダーとして活動された方を当消防本部が支援することで、バイスタンダーの不安を軽減し、更なる応急手当の積極的実施と普及を促進することを目的とした体制です。詳しくはこちら

「バイスタンダー見舞金制度」

誰もが安心して応急手当ができるための環境を整え、普及啓発を推進することを目的とした制度です。詳しくはこちら

 

 

救命講習について

バイスタンダーとなったときに役立つ心肺蘇生法や応急手当などは救命講習で学ぶことができます。詳しくはこちら